この物語の主人公は留置所の看守である近藤という人物です。

近藤は38年間も勤続している警察官、これだけ働ければ自らの仕事に誇りを感じていても良いはずですが、近藤の警察官人生は決して彼の思うようなものではありませんでしたた。

彼の38年間の警察官生活のうち、実に29年間は留置所の看守として過ごしていました。

若いころから刑事志望だった彼にとって留置所での業務は夢にほど遠い内容でした。

かつてはいつか刑事になろうと考えていた近藤ですが、警察官になって38年、さすがにここから刑事への夢を追いかけるのは難しく留置管理係として職業人生を終わろうとしていました。

しかし、刑事になれなかったとしても事件を解決したいという気持ちは近藤の中に息づいていました。

もう定年も迫ろうかという時、彼に少し長めの休暇がもたらされます。

彼はこの休暇を利用してとある事件を追いかけることにしました。

その事件とは1年前に発生したものであり、死体なき殺人事件として未解決のままとなっていました。

この事件には不自然な点がいくつもありました。

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事件の発端はある1人の主婦が失踪したことです。

この主婦はある男と不倫していたとされており、不倫相手への捜査もすぐに行われることになりました。

警察はその状況から不倫相手に殺されたのではないかと考えていたのです。

ところが、不倫相手と思われる相手の男を追及したものの自白を得るには至りませんでした。

それだけでなく物証もなかったため、犯人を特定することは1年が経った今も出来ていません。

近藤はこの事件に目を付け、真相を明らかにすると意気込んでいました。

これまで望みながらも刑事として働くことが出来なかった想いをぶつけられる事件だと近藤は感じていたのです。

近藤は限られた休暇の中で事件の真相に迫っていきます。

彼は刑事として働くことはかないませんでしたが、長年留置所にて様々な人物と関わってきたという経験がありました。

そんな彼はこの事件の真相を解明することが出来るのでしょうか。

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看守眼というタイトル

この小説には看守眼というタイトルが付けられています。これはそのまま看守の眼という意味ですが、主人公である近藤の眼を表しています。

彼には長年にわたって看守として働いてきた眼があり、洞察力に優れています。

刑事たちが1年以上もかけて解決できなかった事件に、刑事の夢破れた男が挑んでいくという内容になっています。

この小説の面白いところは事件の真相が明らかになっていくことだけでなく、1人の警察官である近藤の意地や悲哀などが見受けられるところにあります。

ミステリー小説と言えば華やかな刑事や派手な探偵がカッコよく事件を解決するイメージがありますが、近藤は定年を控えた男であり刑事になる夢も叶っていません。

しかし、彼だからこその着眼点があり、それが事件解決のカギを握っています。

また、取り扱う事件自体も謎の多いものとなっています。

まず主婦が失踪した時点で死体が見つかっていないにも関わらず何故警察は早々に殺人事件と判断したのか。

主婦が不倫していたからといって容疑者を何故不倫相手に早い段階で絞り始めたのか。

また、不倫相手に殺害の証拠がなかったにも関わらず、何故他の犯人に切り替えないのか。

近藤が事件を紐解いていく中、これらの謎が徐々に解き明かされていきます。

ミステリー小説なので読んでいく中で読者は様々な予想を立てることでしょう。

しかし、その予想をことごとく裏切られる展開が待っています。

近藤にとっておそらく警察官人生最後となる事件の真相、そして近藤はこの事件に何を思うのか、その展開から目が離せません。

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