小説「また、同じ夢を見ていた」は、2016年の2月21日に住野よるのよって双葉社から刊行された青春文学になっております。

映画化された話題になったデビュー作「君の膵臓を食べたい」で注目を集めた若手作家による第2弾長編作品になり、2017年には桐原いずみによって漫画化もされています。

一見すると無邪気な小学生たちに隠されている残酷な一面

主人公の小柳奈ノ花は、日々の学校生活での居場所のなさを感じながらクラスメイトとの関係性にも思い悩んでいる小学生の女の子です。

高校在学中から執筆活動に打ち込んでいた著者らしくヒロインとの年齢差も近く、揺れ動く繊細な心の内面が瑞々しいタッチで映し出されていくのが見所になります。

当たり障りのないセリフを並べていく担任の先生や、今時の大人びた少年少女たちから吐き出されていく言葉によって張り詰めた教室の空気感がリアリティー溢れていました。

巡り合う孤独な2人と1匹たちの心温まる交流

そんな奈ノ花の前にも、心の拠り所となってくれる初めての大切な友達が現れます。

奈ノ花の下校時刻を見計らっていつも自宅のマンション近辺でうろうろしている、尻尾のちぎれた黒猫の「彼女」が可愛らしかったです。

彼女を連れて2階建てのアパートでひとり暮らしをしている「アバズレさん」の家を訪れるのが、放課後の奈ノ花の日課になります。

仕事に忙しい奈ノ花の父親と母親に代わっておやつのアイスをご馳走して、時には人生のほろ苦い一面を教えていくシーンが印象深かったです。

昼間は寝ていて夜になると出勤するアバズレさんのお仕事は、小学生の女子児童には想像を絶する世界です。

多くを語ることなくただ「季節を売る仕事」とだけ奈ノ花に告げる、アバズレさんのサバサバとして立ち振る舞いが格好良かったです。

世代を超えて心を通わせていく微笑ましいふたり

丘の上に佇む大きな木の家に暮らしている、「おばあちゃん」も味わい深いキャラクターになっています。

おばあちゃんが奈ノ花のために毎回焼き上げて振る舞う、手作りのマドレーヌが実に美味しそうです。

「ハックルベリー・フィンの冒険」や「星の王子さま」を始めとする、古今東西のジュブナイル小説に詳しいのも面白かったです。

歳の差を乗り越えていくふたりの触れ合いからは、今の時代に失われていく地域コミュニティーの大切さや人と人との繋がりについても考えさせられました。

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いつもとは違う道を見つけた奈ノ花

毎日通る学校からの帰り道の途中で、ふとした気まぐれから遠回りの帰り道を歩いていく奈ノ花の姿が心に残りました。

偶然にも出会った手首に傷を持つ女子高校生の「南さん」との会話によって、彼女の哀しい過去に気付いてしまう奈ノ花には胸が痛みました。

ぶっきらぼうで突き放したようなイメージのある南さんにも、時折優しさや思いやりが見え隠れしています。

本作品の謎めいたタイトルに込められている深い意味が、南さんとの不思議な別れによって次第に明らかになっていきます。

幸せの意味と人生の素晴らしさを追い求めていく

アバズレさんは人生を甘いばかりではなく苦い部分もある、「プリンのようなもの」と表現しています。

子供の頃には甘い部分だけを見て過ごすことができますが、やがては苦い部分にも立ち向かっていかなければならないことが伝わってきました。

良い事も悪い事も全てをありのままに受け入れることによって、徐々に成長していく奈ノ花には胸を打たれました。

「幸せとは何か」という小学生にはあまりにも大きな宿題に取り組み、ひとつの答えを導き出した奈ノ花の奮闘ぶりを多くの読者に体感して欲しいです。

他者とのコミュニケーションが苦手な方や将来への漠然とした不安を抱えている人たちにも、是非とも手に取って頂きたい1冊です。

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