震度0のあらすじ

とある県警察署では警務部長の冬木、警務課長の不破、叩き上げの藤巻などそれぞれが野心を抱えつつ働いていました。

そんな中、1995年1月17日阪神淡路大震災が発生しました。

最大震度7を記録したことの地震によって近畿地方など幅広い地域が混乱に包まれます。

それと時を同じくして発生したのが警務課長である不破の失踪事件です。現役警察官が失踪したということで県警察署には衝撃が走りました。

タイミングからしてどこかで震災の被害に巻き込まれたと考えるのが妥当な状況でした。

直属の上司である冬木は県警最高幹部6人で捜索の協議を始めます。

表向きは部下のことを心配してのことでしたが、冬木は野心家で自らの将来にこの事件が及ぼす影響を心配していました。

そんなことを知ってか知らずか藤巻は警務課内で事件の解決を目指すことにしました。

藤巻は叩き上げの人物であり、彼はこの事件を速やかに解決することが自分の出世に繋がると考えています。

それぞれの思惑が重なり合う中、失踪事件は思わぬ方法へと動き出します。

当初は阪神淡路大震災に被災したことが失踪の大きな原因と考えられていた不破ですが、震災とは無関係な事実がいくつも判明していきます。

不破は失踪する直前にある女性と会っていたことが分かります。

さらに4年前の県議選、逃亡中の殺人犯などと不破の関係性も明らかになっていきます。

不破はどこに行ってしまったのか、不破の失踪は事故かそれとも事件か、警務課長の失踪事件が意外な方向へと動き出します。

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ミステリー要素と人間の思惑のぶつかり合い

あらすじや横山秀夫という作家からミステリー要素の強い作品と思われがちですが、この小説の根幹はミステリーだけに留まりません。

確かに不破の失踪理由が徐々に明らかになっていくという意味ではミステリー小説と呼ぶことが出来ます。

読者の予想を裏切る展開がどんどん巻き起こっていくという点も同様です。

しかし、この小説に登場する人間はほとんどが野心や保身といったことを追い求めており、不破を心から心配して捜索しているわけではありません。

それにより、警察同士の思惑がぶつかり合うストーリーとなっています。

そのある意味でどす黒い人間ドラマがこの小説の真骨頂となっています。

決して心温まるようなストーリーではありませんが、スリリングな展開の連続で飽きさせません。

警察内部の怖さを感じさせつつも、次々と読み進めたくなるような小説です。

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警察官同士が成果を競い合う

ミステリー小説における警察官というのは事件を推理する側に回ることもあれば、探偵などの警察でない組織の人間とぶつかり合うケースが多いです。

小説において保身に走る警察官は悪者として描かれることが多々あり、そういったことを気にせず真実を追求する警察が正義の人として描かれる作品はたくさんあります。

しかし、この小説においては登場する警察官のほとんどが何らかの理由で自らの身を優先しています。

つまり、先の例でいうところの悪者も正義もありません。

事件を解決しようとしている点では全員が正義とも言えますが、失踪事件を自分のために使おうとしているという意味では悪ともいえるわけです。

絶対的な悪人がいてその悪事を暴くというような勧善懲悪のストーリーではありません。ある失踪事件が警察内部の争いを露見させるきっかけを作ったようなものです。

それゆえにミステリー小説や推理小説などを読みなれている方でも面白いと思いやすい内容になっています。

2005年に発表された作品ですが全くそれを感じさせません。むしろ現代的な内容にも感じられるような、そんな特徴を持つ小説です。

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