クラスメイトの病気を知ってしまった語り部である男子高校生と、膵臓の病気を患った、女子高生が織りなす物語です。

内向的で、自分のことを地味で目立たないと評価している読書好きな主人公、方やクラスの人気者で明るく元気な女の子が作中でかかわりを持つのですが、これまた住野よるさんの絶妙な筆力と、表現力によって、コメディのような、青春小説に仕上げられています。

笑えるところもあり、表現が豊かなのでそういう言い方や言い回しもあるのかと、感心させられたり、早くもっとこの文章を読んでみたいという気持ちにさせます。

序盤のような明るさから、ちょっとシリアスな展開、いきなりひっくり返ったりする展開に物語がシフトする度、心が動かされていきました。

小説として読むことはもちろん、自己啓発や、生き方指南のような形の本としても読めるのではないかと言えるほどに精巧に練られ、筆致が素晴らしい本であると言えます。

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君の膵臓を食べたいの見どころ

全く正反対の性格を持つ二人が、日常的に絡んだりする物語ですが、今という時期を必死に生きる女の子と、誰ともかかわろうとしてこなかった男の子が、お互いに無い長所へ惹かれていく過程です。

ずっと本と向き合ってきた主人公に初めてできたかかわりをもってくる人間。

それにとまどいながら、その女の子と関わっていくうちに人と関わるということはどういうことか、という点を含め、様々なことを患っている人間から学びます。

主人公が気づいたり、学んでいくその物事が非常に胸に刺さったり、ハッとさせられたり、泣きそうになるほど感動させられたりと感情の起伏が落ち着かなくなります。

人間関係が希薄だった主人公が人間関係の塊である女の子と関わっていくことで、人と関わるということがどういうことなのか、というものを知って変化していく主人公に感情移入してしまいます。

本の世界のみで生きてきた人間である主人公が、彼女を通して知識や経験を得ていく様はとても心が温まり、涙する部分もあります。

二人の関係は友達以上恋人未満、という単純なものではなく、未だ現代にも定めることができない距離関係であると言えます。

他人に興味がないことで人間関係での経験や取り柄がなかった主人公が唯一彼女に与えることができたものは「日常」であり、医者や親、きっと知ってしまったら変わるであろう友人は「日常」というものを彼女に与えることはできず、主人公から得ることができる嘘偽りのない「日常」を彼女はとても大切にします。

この絶妙な距離感と、彼女独自のユーモアやギャグがとても朗らかで、本当に病気を患っているのかと読んでいて不思議になるぐらいに平和というものを感じます。

終盤になってくると思いもよらぬことが多発し、読み手側に衝撃と感動を与えます。

まさかあの場面のあそこが伏線となっていたのか、という驚きや、主人公や女の子の胸の奥にある感情、今まで学んできたことによるありがたみや。

思い出からくる感情は、涙なくして読むことは不可能でしょう。

この小説はとてもテンポがよく、文章も難しくもない優しくて表現豊かなものなので、読み手側の心へストレートに響いてきます。

主人公が学んでいくことは、誰もが知っているようなことで、全く考えもしなかったことだったり、そういう考え方もあるのかと新たな知見を広げることで世界が広がって見えたり、主人公や彼女を見る視点が変わったりと非常に読んでいて飽きないものであると言えます。

言葉は感情に追いつけないと言いますが、この本は限りなく感情に迫った言葉で紡がれた物語であると断言できます。

読み終わってからの余韻もすさまじく、読み終わった直後からまた最初に戻って読み直したくなるほどのめり込んでいきます。

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