主要な登場人物5人全てが、何らかの特殊な力を持ち、そしてそれぞれ5人はそれを誰にも言わずに日々を送っており、それぞれの視点から、誰にでもあるような日常生活にちょっぴりとした、非日常が入り込み、世界に5種類しかない物語が紡がれます。

内向的な人間、元気で明るい人間、クラスに一人はいるであろう人気者な人間、不登校になってしまった人間、予測不可能な行動をする人間。

5人全員が全員絶妙なキャラクターを持っており、必ず一人とは共感できるような体験を得ることができます。

学生生活という貴重な時間の中でそれぞれの悩みや性格、自己に対する感情や、他者への配慮などが濃密に語られ自問自答し、そこから自分の納得できるような答えや考えを見つけていく彼らのあがきは、友達と言えどその秘密は決してほかに語られることのない彼ら自身の物語で、甘酸っぱく若いその時間に過去の自分を重ねることができます。

これは、誰もが過ごす普遍的な日々にちょっとした特別が紛れ込む物語です。

住野よるさんの文章は、とても表現力豊かであり想像しやすく、それでいて読み手への感情を揺さぶってくるようなものであるため、一度読んだらぐいぐいと、物語へ惹き込まれていくのが特徴的です。

明るく外交的な人物から、暗く内向的な人物、外見と中身で様々なギャップが存在する人物など、全てがすべて一人の人間としてのアイデンティティ―を確立し、どこにでもある日常を彼にしか描けないような日常へを昇華させています。

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この小説での見どころは、主要登場人物それぞれがほかの人にはない、しかし誰もが一度は考えるのではないかという能力を持ち、その能力を隠しながら使い、自分という人間を作り上げているところであり、本音で話しているような関係でもなく、しかし何もかも偽りで通しているような嘘つきでもいられないという、ジレンマを抱えながら、高校生活という青春を日々送っているところです。

ときどきたまに入ってくるちょっとしたギャグやユーモアに笑うこともあれば、急展開に入ったと同時に登場人物と共に様々な思考が読み手の頭の中を駆け巡り、懐かしい高校生時代へとタイムスリップします。

あの時こうしていればよかった、というような後悔に共感したり、反対に抗しなくてよかったと安堵することもあるでしょう。

そんな後悔やもどかしさがふんだんに織り込まれたやり取りや、登場人物視点から読み取れる人間性に深く感傷に浸ることができます。

勘違いやクラスメイトとの確執、そして甘酸っぱい青春。我々が小さいころに手に入れることができたならば、どんなに日常が彩られ楽しく快適な生活を送ることができただろうか、というような能力をもつこの5人ですら、なんてことはない日常を生きる高校生の悩みを完璧に解決することなどできず、特別というのは、決して優れているわけではない、ということを暗にこの小説は教えてくれます。

こうなるのであったなら、能力なんていらないな、と思う人もいれば、こうなるということがあっても俺、私はこんな能力が欲しい、と思う人もいるでしょう。

羨ましがったり、妬んだり、怒ったり、泣いたり、悲しんだり、楽しんだり、ありとあらゆる感情が登場人物と読み手の中で駆け巡ります。

5人全員に共感する方もいれば、特別自分と重なって感情移入をし、思い入れのある登場人物に肩入れして、結末によっては喜び、寂しいと感じることがあるかと思います。

いつも一緒にいる5人がそれぞれほかの人には言えない秘密をもっており、内に秘めた感情があり、たまに腹を割って話したり、などそれぞれの能力があるからこそできること、できないことがある綴られた彼らの日常はこの小説を読むことでより一層と共感が沸き、日常というものの大切さを知ることができるかと思います。

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